Artist: Kanye West
Album: The College Dropout
Song Title: School Spirit Skit 1
概要
本作は、Kanye Westのデビューアルバム『The College Dropout』の根底に流れる「アンチ学歴社会」というテーマを象徴するコメディ・スキットだ。コメディアンのDeRay Davisが演じるのは、大学教育を盲信する皮肉なキャラクターである。多額の借金をして大学を卒業しても、結局は年収2万5千ドルという低賃金の仕事にしか就けず、さらに上司は「コネで入社した高卒の社長の姪」であるという残酷な現実をコミカルに描き出している。高等教育が必ずしも経済的成功や精神的充足を約束するわけではないという、アメリカの資本主義構造に対する痛烈なブラックジョークであり、次曲「School Spirit」へと繋がる完璧な前振りとして機能している。
和訳
[Skit 1: DeRay Davis]
Now beat that!
さあ、これよりマシな人生があるなら言ってみろ!
※beat that=「それに勝ってみろ」「どうだ、すごいだろう」というニュアンス。ここではこれからの悲惨なエピソードを「素晴らしい人生」と反語的に表現するための前フリである。
And your mother's saying "Go to college"
お前の母ちゃんは「大学に行きなさい」って言う。
So you finish college and it's wonderful
それで大学を卒業する、そりゃあ素晴らしいことさ。
You feel so good
最高の気分だろうね。
And after all the partying and craziness
散々パーティーして、バカ騒ぎした後にさ。
And don't forget about that drug habit you picked up at school being around your peers
あ、周りのダチの影響で大学で覚えちまった「薬物依存」のことも忘れるなよ。
Hey!
なあ!
Now you'll get that 25-thousand dollar job a year
これで晴れて、年収2万5千ドルの仕事に就けるってわけだ。
※25-thousand dollar a year=大卒の初任給としては非常に低い額。多額の学費を払ったにもかかわらず、低賃金労働に縛られる現実を皮肉っている。
And you'll spend all your money on crack cocaine
そして、稼いだ金は全部クラック・コカインに注ぎ込むことになる。
But, it'll be your money
でも、それは「自分のお金」だからな。
No more borrowing from mom for my high!
「ハイになるために母ちゃんから金を借りる」なんて情けないマネはもうしなくて済むんだ!
So now you get your degree tattooed on your back
だから、お前は自分の「学位」を背中にタトゥーとして彫る。
You're so excited about it
お前はそれが嬉しくてたまらないんだ。
If you continue to work at the Gap, after several interviews, oh my God
もしお前がGap(アパレル店)で働き続けるなら、何度かの面接を経た後に、なんとまあ。
※Gap=Kanye West自身がブレイク前に働いていたチェーン店。ここでも自己言及的なジョークが盛り込まれている。
You'll come in at a entry-level position
「エントリーレベル(平社員)」のポジションで入れるんだぜ。
※大卒の肩書きがあっても、結局は最低レベルの仕事から始まるという現実。
And when you do that
それで、もしお前がそこで。
If you kiss enough ass
十分にケツにキスして(上司に媚びへつらって)いれば。
※kiss ass=ゴマをする、媚びを売る。
You'll move up to the next level
次のレベルに昇進できるんだ。
Which is being the secretary's secretary
つまり「秘書の秘書」になれるってことさ。
And boy, is that great
いやあ、そいつは素晴らしい。
You get to take messages for the secretary
だって、その秘書のために伝言を受け取れるようになるんだからな。
Who NEVER went to college
ちなみにその秘書ってのは、大学に「一度も」行ったことがない奴なんだけどな。
She's actually the boss's niece!
実のところ、彼女は社長の姪っ子なのさ!
※学歴よりも「コネ(縁故採用)」が優先されるという、労働社会の理不尽さを突いたパンチライン。
So now you're part of the family
これでお前も「ファミリー」の一員だ。
You know what college does for you?
大学が何をしてくれるか分かるか?
It makes you really smart, man
お前を本当に賢くしてくれるんだよ。
All you kids wanted to talk in the back of the class
お前らガキどもは、教室の後ろでペチャクチャ喋りたがってたけど。
Not me, I listened
俺は違う、ちゃんと先生の話を聞いてた。
Okay?
分かるか?
I was a hall monitor
俺は「廊下監視員」だったんだからな。
※hall monitor=アメリカの学校で、休み時間などに廊下の規律を守らせる生徒。典型的な「ガリ勉の優等生」や「お堅いチクリ魔」の象徴。
This was meant to be
こうなる運命だったんだよ。
You know how many classes I took?
俺がどれだけ授業を受けたか知ってるか?
Extra classes, extra classes
補習に次ぐ補習さ。
No, I've never had sex
いや、セックスなんて一度もしたことないよ。
But you know what?
でもさ、聞いてくれよ。
My degree keeps me satisfied
俺の「学位」が俺を満足させてくれるんだ。
When a lady walks up to me and says
女の子が俺のところに歩み寄ってきて、こう言うんだ。
"Hey, you know what's sexy?"
「ねえ、何がセクシーか知ってる?」ってね。
I said, "No, I don't know what it is
だから俺はこう答えた。「いや、何がセクシーかは分からないけど。
But I bet I can add up all the change in your purse
君の財布の中の小銭の合計額なら。
Very fast"
めちゃくちゃ速く計算できるぜ」ってな。
※学歴や勉強の知識(計算の速さ)ばかりを追求した結果、女性の口説き方やストリートの処世術(ストリート・スマート)を全く知らない「ガリ勉の童貞」になってしまった男の悲哀を笑い飛ばすオチ。
