Artist: Frank Ocean
Album: Blonde
Song Title: Facebook Story
概要
本作は、楽曲ではなくフランスのエレクトロニック・プロデューサー、セバスティアン(SebastiAn)が語る実体験のスキットである。3年間交際し同棲までしていた恋人に「Facebookの友達申請」を拒否しただけで浮気を疑われ、破局に至ったというエピソードが語られる。「目の前にいる生身の現実」よりも「SNS上のバーチャルなステータス」を重んじてしまう現代の恋愛観や、テクノロジーが生み出すパラノイア(無意味な嫉妬)への痛烈な皮肉となっている。SNSが人間関係の複雑さと断絶を加速させる現代の孤独を描いた、本作のテーマを象徴する重要なインターリュードだ。
和訳
[Skit: SebastiAn]
No, I was just telling that I, I got this, this girl before
いや、ちょうど話してたんだよ。昔、付き合ってた女の子がいてさ。
And I was together since three years
3年くらい一緒にいたんだ。
And uh, I was not even cheating her or what
別に浮気とか、そんなことは一切してなかった。
And Facebook arrived and, uh
そこにFacebookってやつが登場してさ。
※当時のヨーロッパ(おそらく2000年代後半)におけるFacebookの急速な普及と、それが突如として個人の親密な人間関係に介入してきた時代背景を示している。
She wanted me to accept her on Facebook
彼女、Facebookで友達申請を受け入れてほしいって言ってきたんだ。
And I don't want it, because I was, like, in front of her
でも俺は嫌だった。だって俺は、彼女の目の前にいるわけだからさ。
In front of her, and she told me, like, "Accept me on Facebook"
目の前にいるのに、彼女は「Facebookで私を受け入れてよ」って言うんだ。
It was virtual, means no sense
あんなのバーチャル(仮想空間)の出来事だろ、何の意味もない。
※SNS上のステータスという「虚構」が、物理的な「現実」を侵食していくことへの違和感と拒絶反応である。
So I say, "I'm in front of you, I don't need to accept you on Facebook"
だから俺は言ったんだ。「俺は君の目の前にいるんだから、Facebookで受け入れる必要なんてないだろ」って。
She starting to be crazy
そしたら彼女、狂ったみたいに怒り出してさ。
She thought that because I didn't accept her, she thought I was cheating
俺が申請を受け入れないのは、浮気してるからだって思い込んだんだ。
She told me like, uh, "It's, it's over, I can't believe you"
それでこう言われたよ。「もう終わりよ、あなたのことなんて信じられない」ってね。
I said, "Come on, you're crazy," because like, yeah
俺は「おいおい、おかしいだろ」って言ったよ。だってそうじゃないか。
"I'm in front of you, I'm every day, here in your house"
「俺は君の目の前にいる、毎日ここに、君の家にいるじゃないか」って。
That's, it means, like, it's jealousy, pure jealousy
つまりさ、あれはただの嫉妬なんだよ。純粋な嫉妬さ。
For nothing, you know?
何の意味もないことに対してのな、分かるだろ?
Virtual thing
バーチャルなものに対する嫉妬さ。
※スキットの結び。フランク・オーシャンがアルバムを通じて提示する「物理的な距離の近さ=心の繋がりではない」という、現代特有のディスコミュニケーションを象徴するフレーズである。
